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二章 「私とあなたの『幸せ度合い』」

Author: 桃口 優
last update Last Updated: 2025-09-01 02:27:00

 家に帰ってきて、私は彼の寝顔を眺めていた。

 私は朝三十分間散歩にいくと目がすっきり覚めるから、毎日行っている。

 習慣化していて、特に面倒だと思うこともない。

 彼はいつも私より起きるのが少し遅い。

 私は、彼の茶色の髪色を見ながら自然と笑顔になっていた。「寝顔までかわいらしい人なんてなかなかいないから」といつも思っている。

 私の髪色はチョコレートブラウンで、彼のより少し明るい。でも色も結構似ている気もするから、なんだかおそろい感があっていいから。

 どんな夢を見てるのかな?

 私が出てきていると嬉しいな。

 そんなことを想像するだけで楽しい気分になった。

 何の申し分もなくとびっきり素敵な彼だけど、私は一つだけ彼に対して思うところがある。

 それは、私と彼の『幸せ度合い』の色が違うことだ。

 私は『ピンク』だけど、彼は上から三番目の『グリーン』なのだ。

 そのことがいつも頭に引っかかる。一日一回は必ず考えてしまう。

 もちろん『幸せ度合い』は、愛情だけでは決まらないと思う。

 でも、つい同じ色だったらいいのにと考えてしまう。

 私と結婚したことで、彼の『幸せ度合い』が前より上がったらよかったのに。私が彼を少しでも幸せにすることができていたら嬉しいのにとも思う。

 それに、どんなことであれ、夫婦だから一緒であれば嬉しいと私は考える。

 だから、違うことは寂しい。

 私にとって、彼は一番信頼できる人だから。

 考えすぎて疲れたので、私は彼のいいところを考えることにした。

 彼は今大手の会社で、システムエンジニアをしている。誰もができる仕事ではない。元は私が働いていた職場に新卒で入ってきたのだけど、少ししてから今いる会社にヘッドハンティングをされた。

 その話の経緯を彼は詳しくは話してくれないけど、彼の能力が誰かに認められたことは素直に嬉しかった。

 彼は私がいた職場に入ってきた時から、他の人とはかなり違っていた。

 私はというと、彼と結婚してから仕事を辞めて今は専業主婦だ。

 働くことは嫌いではなかった。でも、働くことは、私にとって予想以上に大変なことだった。

 彼を支えることに専念したいと思った。

 また、私と彼は基本的に性格や考え方など似ているところが多い。

 だから、幸せにたいする考え方も同じように思っていてほしいと思った。

 どうにも気持ちが切り替えられない。それでも考えることを止められなかった。

 私たち夫婦は、今新婚だけど、新婚だという理由だけではなくずっと仲良しでラブラブだ。

 毎日たくさんお話をしている。スキンシップもよくとっている。

 お話に関しては、付き合っていた頃からそうだった。次の日が仕事でも、会える日はいつも会っていたし、会えない日は深夜の遅くまでずっと電話をしていた。

 また明日会社に行けば会えるのに、そうしていた。本当に話をしているのが楽しくて仕方なかった。

 結婚なんていいものじゃないと、まわりの人はよく言っていた。男は結婚したら変わるという話もよく耳に入ってきた。

 そんな言葉を聞いていたけど、私にとって『結婚』とはずっとキラキラしていた。

 だって自分の好きな人とこれから先もずっと一緒にいられるのだから。実際私は結婚することで彼と毎日一緒にいられてすごく幸せだと思っている。

 息苦しいなんて感じたことは一度もない。

 色が違うことは確かに寂しいけれど、そんなことよりも喜びの方が断然大きいことは確かだ。彼は私のために素敵なことをいつもしてくれているから。

 彼は「穂乃果といて幸せだよ」といつも言ってくれている。

 毎日何度も何度も「好きだよ」と言ってくれている。

 彼の『幸せ度合い』か上から二番目の『イエロー』なら、まだ少しは納得がいく。

 でもこんなにも幸せだと伝えてくれているのに、彼の色は『グリーン』なのだ。

 彼は私といて幸せなのかな?

 いや、彼の描く幸せとは私といるということではなく、もっと大きなものかもしれない。

 何かなし遂げたい大きな夢でもあるのかなあ?

 少し頭が痛くなってきた。

 結局また、何もわからなかった。

 やはり幸せかを測るのは、『幸せ度合い』しか私にはないようだ。

 『幸せ度合い』ほど、『幸せ』が可視化されわかりやすいものはない。

 『幸せ度合い』という制度があるから、私は今彼がどれぐらい幸せかわかることができているのだから。

 彼の『幸せ度合い』が『グリーン』だから、彼は今すごく幸せということではない。

 私は彼の『幸せ度合い』を私の力でもっと上げたいと思った。

 私が彼を幸せにすることができたら、それはすごく素敵なことだから。

 どうすれば幸せ度合いが上がるのかわからないけど、愛情があればどうにかなるかと思った。

 彼のためだったら、私はなんだってできる。

 私は彼のことが大好きだから。

 あっ、そういえば、今日は彼はお仕事がお休みだった。

 私は彼が起きたら、彼とどこかに遊びに行きたいと思い、突然胸がワクワクしてきた。

 彼が早く起きないかなと私まあはいつの間にか笑顔になっていた。起きたらすぐに話しかけようと思った。

 そう思いながら、私はさらに『幸せ割引』について考え始めたのだった。

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